シャボン玉石鹸株式会社は2025年8月、製品に含まれる成分が「第一種指定化学物質」の候補として環境省のPRTR制度で議論されていることを公表し、要望書と有害性報告書を提出しました。
この動きが、安全性をうたってきた同社製品を「有害化学物質」として扱う可能性を生み、消費者や業界内で大きな話題となっています。
PRTR制度とは何か
PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)制度は、事業者が化学物質の排出量や移動量を毎年国に報告し、環境への負荷を「見える化」する仕組みです。
これにより、地域住民や消費者、行政が化学物質のリスクを把握しやすくなり、適切な対策や情報開示を進められます。
PRTR指定化学物質の区分と報告義務
下表のように、指定化学物質はリスクの大きさに応じて区分され、企業は該当区分ごとに報告義務を負います。
区分 |
概要 |
報告義務 |
---|---|---|
第一種指定化学物質 |
環境や人体への影響が特に大きく懸念される物質群 |
排出量・移動量の年次報告が必須 |
第二種指定化学物質 |
影響は第一種より小さいが一定の懸念がある物質 |
排出量・移動量の年次報告が必須 |
その他指定化学物質 |
監視・研究目的で指定される物質 |
条件付きでの報告が必要 |
今回の論点:無添加石鹸成分の指定候補
きっかけ
シャボン玉石鹸が主成分とする「脂肪酸カリウム」「脂肪酸ナトリウム」などの天然由来成分が、第一種指定化学物質の候補リストに挙がりました。
これまでは天然・生分解性が高いとして報告義務の対象外でしたが、魚類など水生生物への影響可能性が指摘されたのが発端です。
報告義務の意味
第一種に指定されても製品販売が禁止されるわけではなく、「排出量・移動量を把握して国に報告する」義務が新たに課せられます。企業側は体制整備やコスト増加を懸念しています。
無添加企業側の主張
- 天然由来成分の安全性
シャボン玉石鹸は何十年も「合成界面活性剤不使用」「無添加」をうたってきました。
主成分は植物性油脂由来で、微生物によって短期間で分解されるため、環境負荷は非常に低いとアピールしています。 - 科学的根拠に基づく再評価の要望
指定候補となった根拠資料が不十分として、より詳細な安全性データの開示と第三者機関による再検証を政府に求めています。 - 中小メーカーへの影響
大手に比べて人員や予算が限られる自然派ブランドは、報告システム導入のためのコストや専門知識の確保が難しく、場合によっては事業継続が困難になる恐れを訴えています。
SNSやネットでの反応
ハッシュタグと拡散状況
SNS上では「#守ろう石けん」が急速に拡散し、X(旧Twitter)を中心に数千件規模の投稿が集まっています。
多くの愛用者が同ハッシュタグを付けてシャボン玉石鹸の安全性や信頼を訴え、「政府の指定は過剰」といった声が目立ちました。
賛否の比率と主なポイント
無添加・天然由来をうたうシャボン玉石鹸に対し、投稿者の約8割は「肌トラブルが改善した」「子どもにも安心して使える」として支持を表明。
一方で「本当に有害指定なのか分からない」「政府の化学物質規制は大企業寄りだ」といった懐疑的・批判的な意見も散見されました。
特に大手合成洗剤メーカーへの警戒心や、P&Gなど多国籍企業との比較論が繰り返し投稿されています。
主な投稿例
- 「薬を塗っても治らなかった手湿疹がシャボン玉石けんで治った!これからも使い続けます」
- 「子どものアトピーが軽減したからずっと愛用中。天然100%は大事」
- 「政府が『有害』って指定したい理由は何?合成界面活性剤の大手を守りたいだけじゃないのか」
- 「P&Gに買収されたら無添加の意味がなくなる。日本の企業を応援したい」
- 「規制の話を聞くと心配になるけど、成分と生分解性の事実をもっと公開してほしい」
- 専門家発言
一部の環境学者は「生分解性が高いとはいえ、一定濃度で水生生物に影響を与える研究結果もある」と指摘し、科学的視点からの議論を呼びかけています。
他国の規制動向と比較
日本のPRTR制度は化学物質管理の先進例ですが、欧州連合(EU)ではREACH規則というより厳しい登録・評価・認可制度が運用されています。
REACHでは指定濃度以上の化学物質は製造・輸入前に詳細なデータ提出と安全審査が必須です。
これらと比較すると、日本も今後、リスク評価の透明性強化やリスト改訂の頻度アップが求められるでしょう。
消費者が知っておきたいポイント
- 「指定=禁止」ではない
指定化学物質に入っても、製品販売自体は可能です。まずはメーカーの情報公開状況を確認しましょう。 - 成分表示の見方
ラベルに成分名が並ぶ場合は、化学名だけでなく「由来(天然/合成)」「生分解性」など注釈を探すと理解が深まります。 - 透明性のある企業を応援
年次報告書や安全データシート(SDS)を公開しているブランドは、信頼性が高い傾向にあります。
まとめ
PRTR制度は化学物質管理の透明性を高め、環境保護につながる重要な仕組みです。
一方で、これまで報告義務のなかった天然由来成分に新たな負担が課せられることで、中小自然派ブランドの対応力が試されています。
消費者としては「指定=危険」と早合点せず、成分情報や企業の説明責任をチェックしながら安心して使える製品を選びたいところです。
個人的には今回の件については、無添加の石鹸までに本当に必要なのか疑問は残るところではありますが。
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