大手電機メーカーの東芝で働く幹部候補社員が、人口約3600人の鳥取県日南町役場へ1年間の「レンタル移籍」を始めました。
着任したのは、株式会社東芝の社員・高山亮さんです。高山さんは2026年6月1日付で、日南町役場のまち未来創造課に職員として加わりました。
日南町は、鳥取県南西部の中国山地に位置する山あいの町です。豊かな自然や農林業などの地域資源がある一方、人口減少と少子高齢化が進み、地域交通、産業、担い手確保、行政サービスの維持など、さまざまな課題を抱えています。
一方の東芝は、約9000人が働く府中事業所など、巨大な組織や事業拠点を運営する企業です。
なぜ大企業の幹部候補社員が、人口規模も働き方も大きく異なる地方自治体へ派遣されたのでしょうか。
今回の取り組みは、単なる人手不足の応援や通常の転勤ではありません。町は民間企業の企画力や事業推進力を取り入れ、東芝は将来の経営人材に組織の外で意思決定する経験を積ませるという、双方に目的がある人材交流です。
ここでは、高山亮さんが日南町へ移った理由、レンタル移籍の仕組み、町と企業が得られる効果、地方創生における可能性と課題を分かりやすく整理します。
東芝の社員が鳥取県日南町役場へレンタル移籍
今回、東芝から鳥取県日南町へ派遣されたのは、高山亮さんです。
高山さんは2026年6月1日、任期1年の予定で日南町役場まち未来創造課に着任しました。
東芝の社員として在籍したまま、一定期間、別の会社や組織で働く「社外留職制度」を活用しています。
人材交流を支援する株式会社ローンディールの仕組みを利用した、いわゆる「レンタル移籍」です。
| 移籍した社員 | 高山亮さん |
|---|---|
| 年齢 | 40歳 |
| 所属企業 | 株式会社東芝 |
| 東芝での主な勤務先 | 東芝府中事業所 |
| 移籍先 | 鳥取県日南町役場 |
| 配属 | まち未来創造課 |
| 着任日 | 2026年6月1日 |
| 予定任期 | 1年間 |
| 制度 | 東芝の社外留職制度を利用したレンタル移籍 |
| 主な目的 | 地域課題の解決と、東芝側の経営・マネジメント人材育成 |
報道では高山さんを「幹部候補社員」や、東芝の中でも中心的な役割を担う人材として紹介しています。
ただし、移籍後すぐに町の政策を単独で決定する立場になるわけではありません。日南町の職員や地域住民、事業者と協力しながら、地域課題に向き合うことになります。
高山亮さんはどんな人物?
高山亮さんは、株式会社東芝に勤務する40歳の社員です。
東芝では、東京都府中市にある府中事業所を主な職場としてきました。
府中事業所は、東芝グループの国内最大級の事業拠点で、約9000人が働いています。敷地は東京ドーム約14個分に相当する広さがあり、複数の事業部門やグループ会社が集まっています。
高山さんは、この府中事業所で、事業所運営や企画業務を担当してきました。
また、東芝グループ内の組織が抱える課題や相談に対し、部署の枠を越えて関わる、社内フリーランスのような働き方もしてきたと説明しています。
2022年にもレンタル移籍を経験
高山さんにとって、今回が初めてのレンタル移籍ではありません。
2022年には、東芝インフラシステムズの社員として、全国の祭りや伝統文化を支援する「オマツリジャパン」へ移籍しています。
オマツリジャパンでは、新規事業のパートナー開拓、企画立案、国や自治体の公募事業などに取り組みました。
東芝のような大企業と、意思決定の速いベンチャー企業の違いを体験し、事業を一からつくる仕事に関わったことになります。
今回の日南町への移籍は、高山さんにとって2度目の社外留職です。
ベンチャー企業に続いて地方自治体へ入ることで、企業経営だけでなく、行政運営や住民との合意形成など、さらに異なる経験を積む狙いがあると考えられます。
行政マネジメントを学びたいと考えた理由
高山さんは、約9000人が働く東芝府中事業所を、一つの「町」のように捉えています。
大規模な事業所では、建物や設備の維持、防災、交通、人材配置、組織間の連携など、自治体運営に近い課題が発生します。
そこで、府中事業所の運営に行政マネジメントの考え方を取り入れたいと考えたことが、今回の移籍につながりました。
日南町で学んだことを、将来的に東芝へ持ち帰り、大規模事業所や組織の運営に生かすことも期待されています。
なぜ人口約3600人の日南町を選んだのか
高山さんが行政マネジメントを学ぶだけであれば、人口の多い都市部の自治体を選ぶ方法もあります。
それでも日南町を移籍先に選んだ大きな理由は、町の担当者の熱意と、実際に取り組める課題の多さでした。
高山さんは2025年8月ごろ、レンタル移籍を支援するローンディールの関係者から、地方自治体で働くという選択肢を紹介されました。
その後、複数の自治体が候補となる中、最初に面談したのが日南町でした。
2025年10月ごろに行われたオンライン面談では、日南町の副町長や財務担当者から、町が抱える課題や、高山さんに期待する仕事について説明を受けました。
高山さんは当初、人口減少や豪雪地帯といった情報に不安も感じたとしています。
しかし、町側の担当者の人柄や熱意、積極的な提案にひかれ、日南町への移籍を決めました。
人材の能力だけでなく相性も重要
大企業の社員が地方自治体へ派遣されても、地域側の要望と本人の経験が合わなければ、十分な効果は得られません。
日南町と高山さんは、事前の面談を通じて、町が求める役割と高山さんが学びたい内容をすり合わせました。
町側から一方的に仕事を依頼するのではなく、本人の経験を生かしながら、東芝へ持ち帰れる学びも得られることが重要です。
このような目的の共有が、通常の出向や短期間の視察との大きな違いです。
鳥取県日南町とはどのような町?
日南町は、鳥取県の南西部に位置し、島根県、岡山県、広島県と接する山あいの町です。
中国山地に囲まれた自然豊かな地域で、林業や農業などが主要産業となっています。
人口は約3600人から3700人、高齢化率は55%を超えるとされています。
| 自治体名 | 鳥取県日野郡日南町 |
|---|---|
| 位置 | 鳥取県南西部 |
| 人口 | 約3600人から3700人 |
| 高齢化率 | 55%超とされる |
| 主な産業 | 農業、林業など |
| 地域の特徴 | 中国山地の自然、豪雪地域、複数県との県境 |
| 主な課題 | 人口減少、少子高齢化、担い手不足、地域交通、産業維持 |
人口減少と高齢化が地域運営に直結
人口が減ると、単に住民の数が少なくなるだけではありません。
商店、病院、学校、公共交通、地域行事などを維持する人や利用者も減少します。
自治体の税収が減る一方、道路や上下水道、公共施設など、人口にかかわらず維持しなければならないものもあります。
さらに、行政職員の数にも限りがあります。日々の住民サービスを続けながら、新しい産業政策や移住施策、デジタル化などを進めることは簡単ではありません。
そこで、企業で企画や組織運営を経験した人材を外部から迎え、町の職員とともに課題解決に取り組む狙いがあります。
高山亮さんは日南町で何をする?
高山さんは、日南町役場のまち未来創造課に所属しています。
まち未来創造課は、地域の将来に関わる政策や事業を担当する部署です。
具体的なプロジェクトの全容は、今後の活動に合わせて明らかになるとみられますが、人口減少や少子高齢化などの地域課題に向き合うことが示されています。
東芝で培った企画力を地域で生かす
大企業の事業所運営では、多くの部署や関係者の意見を調整しながら、予算やスケジュールを管理する必要があります。
高山さんが東芝で培った経験は、町の新規事業や地域プロジェクトでも生かせる可能性があります。
- 地域課題の整理と優先順位付け
- 新規事業や地域活性化施策の企画
- 役場内の部署を横断したプロジェクト推進
- 住民や地域事業者との意見交換
- 町外の企業や団体との連携
- 事業の進捗管理や効果検証
- 行政業務の効率化やデジタル活用
ただし、企業で成功した方法を、そのまま自治体へ持ち込めばよいわけではありません。
自治体には、利益だけでは判断できない公共性、公平性、議会や住民への説明責任があります。
高山さんには、企業のスピード感と行政の合意形成をどのように組み合わせるかが求められます。
1年間、実際に町で暮らす
今回の取り組みは、都市部からオンラインで助言する外部コンサルタントとは異なります。
高山さんは日南町に住み、役場職員として日常的に働きます。
地域の行事や生活環境、交通の不便さ、住民同士のつながりなどを自分で体験することで、資料だけでは分からない町の課題や魅力を知ることができます。
外から見た効率だけでなく、地域に暮らす人が何を守りたいのかを理解することが、施策を考えるうえで重要になります。
「レンタル移籍」とはどのような制度?
レンタル移籍は、社員が元の企業に在籍したまま、一定期間、別の会社や組織で働く人材育成の仕組みです。
プロスポーツのレンタル移籍になぞらえた名称ですが、社員の場合は、人材育成や新規事業、組織活性化を目的としています。
転職とは異なり、期間が終了すれば元の会社へ戻ることが基本です。
| 働き方 | 特徴 |
|---|---|
| 通常の転勤 | 同じ会社やグループ内の別拠点で働く |
| 出向 | 関係会社などへ所属を保ったまま派遣される |
| 転職 | 元の会社を退職し、別の組織へ移る |
| レンタル移籍 | 元の会社に在籍しながら、期間限定で外部組織の実務に参加する |
東芝は2021年度から、中堅社員の育成や外部組織との交流を目的として、社外留職制度を導入しています。
ベンチャー企業や官公庁など、大企業とは仕事の進め方が異なる組織で働くことで、新規事業や経営判断に必要な経験を積ませる狙いがあります。
日南町が得られるメリット
大企業の企画・運営ノウハウを取り入れられる
日南町は、高山さんが東芝で培った企画力、組織運営、関係者調整などの経験を活用できます。
自治体内部だけでは出にくい視点や、企業で一般的に使われているプロジェクト管理の方法が、新しい施策につながる可能性があります。
外部の視点で地域の魅力を見直せる
地域に長く暮らしていると、身近な自然、文化、産業を特別なものとして認識しにくくなることがあります。
町外から来た高山さんが、日南町の資源を別の視点で発見し、発信方法や事業化を提案できる可能性があります。
東芝や外部企業との接点が生まれる
高山さんを通じて、東芝グループや都市部の企業、人材との新しい接点が生まれることも期待されます。
企業との実証実験、地域産品の販路開拓、デジタル技術の活用など、町単独では難しい取り組みにつながる可能性があります。
役場職員への刺激になる
異なる組織文化を持つ人材が入ることで、既存の業務や意思決定を見直すきっかけになります。
高山さんが町から学ぶだけでなく、役場職員も大企業の仕事の進め方を学べる相互交流が期待されます。
東芝側が得られるメリット
限られた資源で経営する経験
人口の少ない自治体では、人員や予算が限られています。
限られた条件の中で優先順位を決め、成果を出す経験は、企業の経営や事業運営にも通じます。
住民との合意形成を学べる
企業では、顧客や株主などの関係者を意識して意思決定します。
自治体では、年齢、職業、生活環境の異なる住民に対し、公平性を保ちながら説明しなければなりません。
異なる意見をまとめる経験は、将来、多様な社員や取引先を率いる幹部人材にとって重要です。
大企業の常識を見直せる
大企業では、専門部署や既存の仕組みが整っている一方、決定までに時間がかかる場合があります。
小規模な自治体で、担当者が複数の役割を担い、住民と直接向き合う経験をすることで、自社の制度や働き方を別の角度から見直せます。
新しい事業のヒントが得られる
地方が抱える交通、医療、防災、エネルギー、人手不足といった課題は、今後、日本全体へ広がる可能性があります。
課題の最前線で働くことは、東芝の社会インフラやデジタル技術を生かした新規事業のヒントにもなり得ます。
取り組みのデメリットや課題
1年間で結果を出すのは簡単ではない
地域課題は、短期間で解決できるものではありません。
住民との信頼関係を築き、状況を理解するだけでも時間がかかります。
任期中に事業を始められても、移籍終了後に誰が引き継ぐのかを最初から考える必要があります。
企業のやり方を押し付ける危険
企業では効率や収益性が重視されますが、行政には採算が合わなくても維持しなければならないサービスがあります。
数字だけで地域の価値を判断すると、住民に必要なものや地域文化を見落とす可能性があります。
受け入れる自治体側にも負担がある
外部人材が能力を発揮するには、町側も情報提供や職員との調整、生活支援などを行う必要があります。
人材を受け入れるだけで自動的に課題が解決するわけではありません。
成果が見えにくい場合がある
イベントの来場者数や売上のように、すぐ数字で示せる事業ばかりではありません。
職員の意識変化、組織間の連携、将来の事業につながる人脈など、長期的な効果も含めて評価する必要があります。
なぜ今回の取り組みが注目されているのか
今回の取り組みが注目されているのは、大企業の幹部候補社員が人口約3600人の町へ実際に移り住み、役場職員として働くという組み合わせの意外性です。
これまで、企業が自治体へ人材を派遣する場合、デジタル化や特定分野の専門家を派遣する例が中心でした。
今回は、地域課題の解決だけでなく、企業側の将来の経営人材を育てることも目的となっています。
地方支援を一方向の社会貢献として扱うのではなく、町と企業の双方が学び、利益を得る仕組みとして設計されている点が特徴です。
人口減少が全国共通の問題となる中、地方の現場を経営人材の学びの場として捉える考え方にも関心が集まっています。
SNSやネット上の反応の傾向
SNSやニュースサイトのコメント欄では、地方創生への期待と、短期間の派遣でどこまで成果が出るのかを疑問視する意見の両方が見られます。
実際の投稿を個別に引用せず、反応の傾向を整理すると、次のような意見があります。
- 大企業の優秀な人材が地方へ行く取り組みは面白いという反応
- 机上の研修より、実際に地域で暮らす方が学びが大きいという意見
- 町の課題解決だけでなく、東芝にも経験が還元される点を評価する反応
- 1年間だけで人口減少を解決するのは難しいという指摘
- 移籍終了後も継続できる仕組みを残してほしいという意見
- 地方自治体が大企業の研修先として利用されるだけにならないかという懸念
- ほかの大企業でも同様の制度を広げてほしいという反応
- 高山さんが日南町で具体的に何を実現するのか注目したいという意見
地域側にとって本当に必要な事業をつくれるかどうかが、取り組みへの評価を左右すると考えられます。
今後の注目点
具体的にどの地域課題へ取り組むのか
人口減少や少子高齢化といっても、交通、産業、教育、医療、移住など、課題は幅広くあります。
高山さんが中心となる具体的なプロジェクトや、達成目標がどのように設定されるかが注目されます。
住民や地域事業者を巻き込めるか
行政内部だけで計画を作っても、地域の人が参加しなければ継続できません。
住民、農林業者、商店、学校、地域団体などと、どのように信頼関係を築くかが重要です。
1年後に何を町へ残せるか
高山さんの任期は1年間の予定です。
本人がいなくなった後も、役場職員が続けられる制度、業務手順、人脈、プロジェクトを残せるかが成果を判断するポイントになります。
東芝へどのように経験を持ち帰るのか
日南町で学んだ行政運営や合意形成を、東芝府中事業所の運営や新規事業にどのように生かすのかも注目されます。
高山さん個人の経験で終わらず、東芝の組織全体へ共有されることが重要です。
ほかの企業や自治体へ広がるか
日南町で成果が出れば、人口減少に悩むほかの自治体と大企業の人材交流が広がる可能性があります。
地方自治体が単に人材を受け入れるだけでなく、企業の人材育成や事業開発に貢献する新しい関係が生まれるかもしれません。
まとめ
株式会社東芝の社員・高山亮さんは、2026年6月1日から1年間の予定で、鳥取県日南町役場へレンタル移籍しています。
高山さんは40歳で、東芝府中事業所の運営や企画などを担当してきました。
2022年にはオマツリジャパンへのレンタル移籍も経験しており、今回が2度目の社外留職となります。
日南町は人口約3600人、高齢化率55%を超える山あいの町です。人口減少、少子高齢化、産業や地域サービスの担い手不足などの課題を抱えています。
町側は、高山さんが大企業で培った企画力や組織運営の経験を、地域課題の解決に生かすことを期待しています。
一方、高山さんと東芝側は、行政マネジメントや住民との合意形成、限られた資源で事業を進める経験を得られます。
つまり、今回の取り組みは、大企業が地方を一方的に支援する制度ではありません。
日南町は外部人材の経験を得て、東芝は将来の経営人材を育てるという、双方にメリットのある人材交流です。
ただし、任期は1年間です。短期間で地域課題をすべて解決することは難しく、終了後も町に残る仕組みをつくれるかが重要になります。
高山さんが日南町でどのようなプロジェクトを立ち上げ、町と東芝に何を持ち帰るのか、今後の活動が注目されます。


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