キオクシアに約371億円の賠償評決|米特許訴訟の経緯と株価ストップ安の影響

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半導体大手のキオクシアホールディングスに、米国の特許訴訟をめぐる大きなニュースが飛び込んできました。

米テキサス州の連邦地裁で、キオクシア側が米衛星通信会社Viasat(ビアサット)の特許を侵害したとして、陪審が約2億2900万ドルの損害賠償を認める評決を下したのです。

キオクシアの換算では約371億円に上ります。報道直後の2026年7月17日には、キオクシアホールディングスの株価が前日比1万円安となり、値幅制限いっぱいのストップ安で取引を終えました。

ただし、今回出たのは米国の陪審による評決です。キオクシアは内容を受け入れない方針を示しており、評決後の申し立てや控訴を含む法的手段を取ると発表しています。約371億円の支払いが現時点で最終確定したわけではありません。

キオクシアの米国特許訴訟で何が起きた?

キオクシアホールディングスは2026年7月17日、連結子会社のキオクシア株式会社とKioxia America, Inc.に対する米国特許訴訟について、陪審評決が出たと発表しました。

評決が下されたのは、米国時間の7月16日です。米テキサス州西部地区連邦地方裁判所の陪審は、キオクシアグループの一部製品がViasatの特許権を侵害しているとする原告側の主張を認めました。

項目 確認されている内容
原告 Viasat, Inc.
被告 キオクシア株式会社、Kioxia America, Inc.
裁判所 米国テキサス州西部地区連邦地方裁判所
提訴日 2021年11月29日
陪審評決日 2026年7月16日(米国時間)
損害賠償額 約2億2900万ドル
円換算額 約371億円(1ドル=162円で換算)
キオクシアの対応 評決後の申し立てや、必要に応じた控訴を含む法的手段を検討

ニュースの見出しでは「賠償命令」と表現されることもありますが、キオクシアの適時開示では賠償額を「暫定的」としています。今後の裁判所による手続きや控訴の結果によって、判断や金額が変わる可能性があります。

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何の特許が問題になったのか

争われたのは、フラッシュメモリーの誤り訂正に関係する技術です。裁判資料では、Viasatが保有する米国特許第8,615,700号が対象になっています。

フラッシュメモリーは、電源を切ってもデータを保持できる記憶装置です。スマートフォンやパソコン、SSD、データセンターなど、身近な電子機器からAIインフラまで幅広く使われています。

データを書き込んだり読み出したりする回数が増えると、記憶した情報に誤りが生じる場合があります。その誤りを検出し、できるだけ正しいデータへ修復するのが「誤り訂正」の技術です。

Viasatは、衛星通信向けの誤り訂正システムを開発する過程で、フラッシュメモリーの消費電力を抑えながら、信頼性や寿命を向上させる技術を開発したと主張しています。

そのうえで、キオクシアの一部フラッシュメモリー製品に、Viasatの特許と同様に機能する誤り訂正技術が使われていると訴えました。

一方のキオクシア側は、特許侵害を否定するとともに、特許自体の有効性についても争ってきました。今回の陪審はViasat側の主張を認めましたが、キオクシアは評決に誤りがあるとの立場を明確にしています。

2021年の提訴から評決までの時系列

時期 主な動き
2021年11月29日 Viasatがキオクシア株式会社とKioxia Americaを米テキサス州西部地区連邦地裁に提訴
提訴当初 キオクシアの一部フラッシュメモリー製品が、Viasatの誤り訂正技術に関する特許を侵害していると主張
2022年以降 米国特許商標庁の特許審判部で、特許の有効性を争う当事者系レビューが進む
2024年10月 Viasatが地方裁判所で争う対象を、米国特許第8,615,700号の請求項16に絞る
2024年10月17日 関連する特許有効性の審理を待つため、地方裁判所が訴訟手続きを一時停止
2025年1月 Viasatが早期の公判実施を求めた申し立てについて、米連邦巡回区控訴裁判所が認めず
2026年7月16日 米テキサス州の陪審がViasat側の主張を認め、約2億2900万ドルの損害賠償を評決
2026年7月17日 キオクシアホールディングスが評決内容と今後の対応を適時開示

提訴から評決まで約4年8カ月を要しています。途中では、特許の複数の請求項について有効性が争われ、Viasatは最終的に地方裁判所での争点を請求項16のみに絞りました。

特許訴訟では、製品が特許の技術的範囲に含まれるかだけでなく、そもそも特許が有効なのかという点も大きな争点になります。今回の評決だけで一連の争いが完全に終了したとはいえません。

キオクシアとViasatはどんな会社?

キオクシアホールディングス

キオクシアは、NAND型フラッシュメモリーやSSDなどを開発・製造・販売する日本の半導体メーカーです。旧東芝のメモリー事業を前身とし、2019年に「東芝メモリ」から現在の社名へ変更しました。

スマートフォン、パソコン、サーバー、データセンターなどで使われる記憶装置を手がけています。AIサービスの普及によって大量のデータ保存需要が生まれるなか、NAND型フラッシュメモリーの有力企業として注目されています。

今回訴えられたキオクシア株式会社は製品の開発・製造・販売を担当し、Kioxia Americaは米国でメモリーやSSD製品を販売する子会社です。

会社 概要
キオクシアホールディングス株式会社 キオクシアグループを統括する持株会社。東証プライム上場、証券コード285A
キオクシア株式会社 メモリーおよび関連製品の開発・製造・販売を担当
Kioxia America, Inc. 米国でメモリーおよびSSD製品を販売
代表者 キオクシアホールディングス社長執行役員・太田裕雄氏

Viasat

Viasatは、米カリフォルニア州カールスバッドに本拠を置く通信会社です。衛星ネットワークや航空機向け通信、政府・防衛分野の通信システムなどを手がけています。

1986年にマーク・ダンクバーグ氏らが共同創業し、現在もダンクバーグ氏が会長兼CEOを務めています。

一見するとフラッシュメモリー会社とは離れた存在に見えますが、衛星通信では、宇宙空間や長距離通信で発生するデータの誤りを修正する技術が欠かせません。Viasatは、その研究開発で得た技術がメモリー分野にも関係していると主張しています。

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キオクシアは評決を受け入れない方針

キオクシアホールディングスは7月17日の発表で、Viasatの主張と陪審の判断について「到底容認できるものではない」との姿勢を示しました。

今後は、陪審評決に誤りがあると考える点について評決後の申し立てを行い、必要に応じて控訴することも含め、取り得る法的手段を講じるとしています。

会社側が発表した要点は次のとおりです。

  • Viasatの主張と陪審判断は受け入れられない
  • 評決後の申し立てを行う方針
  • 必要に応じて控訴する可能性がある
  • 顧客への製品・サービス提供に影響はない
  • 連結業績への影響は現在精査している
  • 開示が必要な事項が発生すれば改めて公表する

現時点では、問題になった具体的な製品名や型番、対象製品の売上規模は公表されていません。販売停止や米国市場からの撤退を発表した事実もありません。

キオクシアは、今回の評決が顧客への製品やサービスの提供に及ぼす影響はないと説明しています。

株価への影響は?7月17日にストップ安

評決が日本で報じられた2026年7月17日、キオクシアホールディングスの株価は大幅に下落しました。

7月17日の株価データ 金額・変動
前日終値 6万2,110円
始値 5万5,900円
高値 5万6,750円
安値・終値 5万2,110円
前日比 1万円安、16.10%下落
出来高 4,150万2,000株

株価は午前9時31分にストップ安となる5万2,110円まで下落し、そのまま同額で取引を終えました。約371億円という大きな評決額に加え、最終的な支払額や会計処理、今後の法廷闘争が見通しにくいことが警戒材料になったとみられます。

ただし、株価下落のすべてが特てが特許訴訟だけによるものとは断定できません。キオクシア株は前日の7月16日にも15.03%下落しており、米国半導体株安や、それまでの急上昇に対する利益確定売りも重なっていました。

7月15日の終値水準から7月17日の終値まででは、約29%下落した計算になります。6月22日につけた年初来高値11万2,700円と比べると、7月17日の終値は半値以下です。

キオクシア株はAI向けデータ保存需要への期待から、それ以前に大きく上昇していました。上昇幅が大きかった分、悪材料が出た際の値動きも激しくなった面があります。

7月17日夜のPTSでも、午後10時46分時点で4万9,900円と、東証終値をさらに4.24%下回りました。ただし、PTSは東証と比べて取引参加者や流動性が異なるため、その価格が次の営業日の終値をそのまま示すものではありません。

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約371億円はキオクシアの業績にどの程度影響する?

キオクシアの2026年3月期は、AI関連需要やメモリー市況の改善を追い風に業績が大きく伸びました。Non-GAAPベースの通期売上高は約2兆3,376億円、営業利益は約8,762億円とされています。

約371億円という評決額は、同営業利益の約4%に相当します。単純比較では、会社の存続を揺るがす規模とまではいえません。

ただし、営業利益と損害賠償額をそのまま比べるだけでは、実際の業績への影響は判断できません。

  • 評決額が最終的に維持されるか
  • 評決後の申し立てや控訴で減額・取り消しとなるか
  • どの時点で会計上の費用や引当金を認識するか
  • 判決前後の利息や訴訟費用が加わるか
  • 将来の製品にライセンス料が必要になるか
  • Viasatと和解する可能性があるか

キオクシアは業績への影響を「現在精査中」としており、7月17日時点では具体的な費用計上額や時期を示していません。

約371億円が直ちに全額支払われる、あるいはそのまま次回決算の損失になると決まったわけではありません。今後の裁判手続きと会社の追加開示を確認する必要があります。

なぜ2億2900万ドル評決が大きなニュースになった?

金額が大きい

円換算で約371億円という金額は、日本企業の特許訴訟として強いインパクトがあります。最終確定前であっても、投資家が将来の費用負担を先回りして警戒しやすい規模です。

AI需要で注目されていた銘柄だった

生成AIの普及によって、学習データや生成データを保存するストレージ需要が拡大しています。キオクシアはNAND型フラッシュメモリーの有力メーカーとして、AI関連銘柄の一つに数えられてきました。

業績拡大への期待で株価が急上昇していたところに訴訟リスクが表面化したため、反応が大きくなったとみられます。

製品への影響範囲がまだ分からない

キオクシアは顧客への供給に影響しないと説明しています。一方で、具体的にどの製品が対象となり、将来の販売やライセンス契約にどのような影響が生じるかは、現時点では明らかになっていません。

損害賠償額そのものだけでなく、将来の事業への影響がまだ読みづらいことも、株式市場の不安につながっています。

SNSやネット上の反応の傾向

SNSや株式掲示板では、株価がストップ安となったことを受けて、さまざまな見方が出ています。実際の投稿をそのまま引用せず、全体的な反応の傾向をまとめると次のようになります。

  • 約371億円という金額の大きさに驚く反応
  • 陪審評決と最終判決の違いを確認しようとする動き
  • 控訴によって評決が覆る可能性に注目する反応
  • 好調な業績と比べれば吸収可能ではないかという見方
  • 賠償額よりも将来の販売・ライセンスへの影響を警戒する反応
  • 株価が急上昇していたため調整が大きくなったという見方
  • ストップ安後もすぐには手を出しにくいという慎重な反応
  • AI向けNAND需要という成長材料は変わっていないとする反応

短期的な株価の方向性をめぐっては、強気と弱気が大きく分かれています。約371億円だけを見て判断するのではなく、控訴の行方、会計上の費用認識、製品供給への影響を分けて確認する動きが広がっています。

今後の注目点

評決後の申し立て

キオクシアは、陪審評決に誤りがあると考える点について、評決後の申し立てを行う方針です。裁判官が評決をどのように扱い、正式な判決を出すのかが最初の注目点になります。

控訴するかどうか

キオクシアは必要に応じて控訴するとしています。控訴審では、法解釈や裁判手続きに誤りがなかったかなどが検討されます。

米国の大型特許訴訟では、一審の陪審評決が控訴審で取り消されたり、損害賠償額が変更されたりする例もあります。ただし、今回も同じ結果になるとは限りません。

業績への影響と費用計上

次に注目されるのが、キオクシアの追加開示です。会社は連結業績への影響を精査しているため、引当金や訴訟関連費用を計上する場合には、その金額と対象期間が焦点になります。

キオクシアホールディングスは、2026年7月31日に2027年3月期第1四半期決算を発表する予定です。決算説明で訴訟に関する追加情報が示されるか注目されます。

対象製品と販売への影響

現時点でキオクシアは、顧客への製品・サービス提供に影響はないとしています。今後も販売を継続できるのか、製品設計の変更やライセンス契約が必要になるのかが重要です。

Viasatとの和解の可能性

特許訴訟では、控訴手続きと並行して当事者間で和解交渉が行われる場合があります。キオクシアとViasatが和解を検討しているとの公式発表は、現時点では確認されていません。

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まとめ

米テキサス州の連邦地裁では2026年7月16日、キオクシア株式会社とKioxia AmericaがViasatのフラッシュメモリー関連特許を侵害したとして、約2億2900万ドルの損害賠償を認める陪審評決が出ました。

キオクシアの換算では約371億円です。このニュースを受け、キオクシアホールディングスの株価は7月17日に前日比1万円安の5万2,110円となり、ストップ安で取引を終えました。

一方、今回の金額は最終確定したものではありません。キオクシアは評決を受け入れず、評決後の申し立てや控訴を含む法的手段を取る方針です。顧客への製品・サービス提供には影響がないとも説明しています。

株価急落には訴訟への警戒が影響したとみられますが、前日から続いていた半導体株安や、それまでの株価急上昇に伴う反動も無視できません。

今後は、正式な判決、キオクシアの控訴、約371億円の会計処理、対象製品への影響、7月31日の決算発表が主な注目点になります。

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